「ミカンちゃん、お会計お願い!」
『はーい!』
他の客から声がかかる。
「人気者だな。ミカン。」
『ふふ。行ってきますね。』
「あぁ。」
「ごめんなさいね。邪魔しちゃったかしら?」
先ほどのマダムだ。
『いえ!そんなことありませんよ!』
「なんだかあなた達、いい雰囲気だったわよ。」
『そんな、私なんかとんでもない!』
「あなたはこのお店のアイドルなんだから!あなた目当てのお客さんも多いのよ?
彼もそうじゃないのかしら?」
『まさか!』
「あら、どうかしら。それじゃ、また来るわね!」
『ありがとうございました!』
ふとサボくんの方を見ると手をひらひらさせて私を呼んでいる。
「俺ももう行くよ。」
『えっ!もう行くんですか?』
まだほんの数分しか経っていないのに。
「これから仕事に行くところなんだ。」
『そうだったんですね!忙しいのにありがとうございます。』
「おう。じゃあ、またな。ミカン。」
『あのっ!』
「ん?」
また危険な仕事にいくんだ。今度は擦り傷では済まないかもしれない。
そんな事が頭に浮かんで、つい呼び止めてしまった。
『いや、あの・・・気をつけて。』
ふっと柔らかい表情をするサボくん。
「そんなに心配そうな顔するな。覚えとけ。俺は死なねぇ。ミカンの心を俺のものにするまではな。」
また来るよ。と言って去っていくサボくん。
扉がカランコロンと音を鳴らす。
バカ。もうとっくにサボくんのものだよ。