『いらっしゃいませ!』
扉の方を見ると、彼が立っていた。
『サボくん!』
「ミカン、久しぶりだなっ!」
よっ!と右手を挙げながら、目を細めて笑うサボくん。
ゆっくりとした足取りでいつもの席に座る。
洗練された動きの一コマ一コマがまるで絵画のように美しく、思わず時が止まったように見とれてしまう。
「コーヒーもらえるか?」
『あ、はい!』
サボくんの声にはっとしてサーバーを準備する。
「ミカン、今俺に見とれてたろ?」
『み、見とれてないです!』
サボくんは楽しそうにクスクス笑っている。
は、恥ずかしい・・!
『そういえば、今日はちょっとお久しぶりですね。』
サボくんの前にコーヒーを置きながら声をかける。
「あぁ。ちょっと任務が長引いてな。」
そう言ってコーヒーに口をつける。
『そうなんですね。しばらく来られてなかったから何かあったのかと心配しました。』
「ミカンが心配してくれてたのか。それは嬉しいな。」
『手、怪我してますね。』
軽い擦り傷ができた手にそっと触れる。
「こんなの怪我の内に入らねぇよ。」
あっけらかんと言うサボくん。
いつも激務なんだろうな。
危険な仕事だってたくさんしてるはずだ。