「ミカン、ぼーっとしてねぇで手元しっかり見てろよ。怪我するぞ。」
『あ、すみません。マスター。』
「そんなにあいつが気になるのか?」
『いえ!そういう訳じゃ・・!』
「ふっ、そうか。」
『あっ!というかあいつって誰の事ですかー!』
マスターの意味ありげな表情を見て、からかわれた事に気付く。
当のマスターはケラケラとおかしそうに笑っていた。
ーーーそれにしても遅いな。いつもならもうとっくに来てるはずなんだけど。
私はバルティゴの近くの町にある喫茶店で働いている。
今はメニューのサンドイッチを作っているところ。
といっても、バルティゴの場所は知らないんだけど。
彼が近くだと言っていた。
いつも定期的に来店する彼。
今回はちょっと期間が空きすぎている。
何か、あったのかな。
カウンターの1番奥の席。彼がいつも座る席をぼんやり眺める。
「ミカンちゃん!注文いいか?」
『はーい!すぐ行きます!』
常連さんとはもう仲良しだ。
「ミカンちゃんがウチの息子のお嫁さんに来てくれたらねー。」
『またまたー!冗談はやめて下さい!』
「あはは!冗談じゃないんだけどね。」
常連のマダムと話していると、店の扉がカランコロンと音を鳴らした。